『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』 岩波新書
柳瀬尚紀(1943-2016)の『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』を読了しました。並行してジョイスの『ユリシーズ』を読んでいるのですが、そちらの読書の方はゆっくりとした進み行きでなかなか終わりが見えてきません。本書は『ユリシーズ』の第12挿話に焦点を当てて、その新しい読みを提示するという野心的な作品です。
完全にネタバレになってしまいますが、本書の魅力はその論証にこそあると信じて述べるとすると、この新しい読みとは、第12挿話の語り手=犬であるという論説です。正直なところ、私にはこの論証がどこまで成功しているのか、あるいは失敗しているのかよく解りません。『ユリシーズ』を読み終えたときに、あらためて自分の中で振り返ってみたいと思います。
【満足度】★★★☆☆