文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

須藤靖・伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』

須藤靖・伊勢田哲治

『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』 河出ブックス

 

須藤靖・伊勢田哲治『科学を語るとはどういうことか 科学者、哲学者にモノ申す』を読了しました。物理学者である須藤氏が持つ「科学哲学」に関する疑問や不信感を、科学哲学者である伊勢田氏にぶつけて、伊勢田氏がそれに答えるというかたちで構成された対談本です。これが滅法面白くて、寝食を忘れて読みふけってしまいました。

 

ソーカル事件や「ビリヤードの事例を使って因果を語る」手法に我慢がならない須藤氏の議論は、そのきっかけの部分については共感できるところがあるものの、クリティカルシンキングの実践を自称する伊勢田氏の丁寧な応答に比べると、いささか乱暴に過ぎるところがあって、本書全体を通じて印象に残ったのは須藤氏の思い込みの強さでした。ここには哲学者への身びいきというものも幾分は存在しているのかもしれませんが。

 

とはいえ、ほとんどの科学哲学者は科学者のために科学哲学を行っているのではないという伊勢田氏の言明は、しごくまっとうな意見ではありながらも、哲学という学問分野の特殊さ(しかもあまり良い意味とはいえないもの)を浮き立たせてしまうのだと思い知らされた気がします。

 

【満足度】★★★★★