文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョン・ロック『知性の正しい導き方』

ジョン・ロック 下川潔訳

『知性の正しい導き方』 ちくま学芸文庫

 

ジョン・ロック(1632-1704)の『知性の正しい導き方』を読了しました。イギリスの偉大な哲学者ロックの遺稿をもとに彼の死後に出版されたのが本書で、その原題は“Of the Conduct of the Understanding”です。私たちの持つ知性をどのように働かせるべきか、知性が迷い込みやすい陥穽をどのように避けるべきかが語られます。

 

本書に付せられた訳者による詳細な解説によれば、本書を貫く二つのテーマは「新しい論理学」と「知性の倫理」であるとのこと。本書はロックの主著である『人間知性論』のいわば続編という位置づけの作品であるともいえそうですが、主著で考察された人間知性の本性を、より実践的に特徴づけようとしたのが本書であると言えそうです。ロックは「観念連合」を治療を施されるべき狂気であると捉えるわけですが、本書でもロックはこの悪弊について考察を加えています。

 

いわゆる近世哲学の研究・理解という視点を離れて、本書が現代の人にどこまで有益な視点を提供することができるのか、私には懐疑的な部分もあるのですが、それでも凡百の「自己啓発書」を読むよりははるかに価値のあるものが得られるのではないでしょうか。

 

【満足度】★★★☆☆