崔実
『ジニのパズル』 講談社
崔実の『ジニのパズル』を読了しました。本書は群像新人文学賞、芸術選奨新人賞、織田作之助賞を受賞した話題の作品です。最近になって文庫化されたようですが、以前に購入して読めないままになっていた本書を最近になってようやく手に取ることができました。
一言でいえば在日韓国人を主人公にした青春小説なのですが、いくつもハッとさせられる描写に出会います。日本人学校、朝鮮学校、ハワイ、オレゴンといくつもの場所を彷徨する主人公ジニの軌跡を、物語上では逆向きに辿っていくことになるのですが、その主要な部分を成しているのは朝鮮学校での日々のことです。そして本書は在日韓国人を巡る物語であると同時に、結局のところは「大人」と「子ども」の話でもあって、それが本書をひとつの青春小説たらしめているのだと思います。
【満足度】★★★★☆