文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ロブ=グリエ『消しゴム』

ロブ=グリエ 中条省平

『消しゴム』 光文社古典新訳文庫

 

ロブ=グリエ(1922-2008)の『消しゴム』を読了しました。戦後フランスの文学運動「ヌーヴォー・ロマン」の旗手であるロブ=グリエの初長編作品です。丁寧な訳者解説と相まって、ヌーヴォー・ロマンと呼ばれるものの入門編としては最適な作品になっているのではないかと思います。以前にミシェル・ビュトールの『心変わり』を読んだことがありますが、同じ文庫で手に入れるのであれば、こちらの方が良いでしょう。

 

推理小説の筋立てを借りた普通小説なのですが、推理小説として読むことも可能な作品ではあります。そして、その推理小説として読んだときのズレのようなものが、この作品をいわゆるメインストリームの文学たらしめているのだと思います。とはいえ、その両者の違いは現代にあっては何ほどのものでもなく、その状況を準備したという一事をもってもこの作品は偉大なのだと思います。

 

【満足度】★★★★☆