文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

J・アーヴィング『未亡人の一年』

J・アーヴィング 都甲幸治・中川千帆訳

『未亡人の一年』 新潮文庫

 

J・アーヴィング(1942-)の『未亡人の一年』を読了しました。本書は『サーカスの息子』の次に発表されたアーヴィングの長編作品で、文庫本でも500ページ超えの二巻本と相変わらずの長大さを誇っています。しかし、その長さをあまり感じさせないストーリーテリングぶりも、いつもの通り見事なものになっています。最近の作品では、そのあたりの「冴え」のようなものがどうにも鈍っているように感じられたのですが、本書は面白く読むことができました。

 

性と死をめぐる喜劇とも悲劇ともつかないドラマが、長い長い時間軸に沿って描かれます。粗筋を聞いただけでは、まったくどんな話なのかがピンと来ないのはアーヴィングの作品の特徴だと思うのですが、本書にしてもそれを読みきってしまわないと、どのような作品なのかを語ることはできないものになっています。大団円に向けての助走の取り方に円熟味が増しているというか、とにかく最後まで面白く読みきることができました。

 

【満足度】★★★★☆