文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

カント『純粋理性批判』

カント 熊野純彦

純粋理性批判』 作品社

 

イマヌエル・カント(1724-1804)の『純粋理性批判』を読了しました。ドイツの哲学者であるカントは、ルネ・デカルトに始まる大陸の合理主義とジョン・ロックに始まるイギリスの経験主義を批判的に統合することで、超越論的観念論と呼ばれる独自の立場を作り上げた、いわずと知られた哲学史上の大物のひとりです。大学一回生のときに『純粋理性批判』の緒言(Einlatung)を英語で読むという演習に出て、哲学の言葉の訳の解らなさに打ちのめされたことは良い思い出になっています。

 

その後、ドイツ語で感性論を読む演習などにも参加しながら、なかなか最初から最後まで読み切ることができないまま現在に至っていたことが心残りだったのですが、ようやく(翻訳ではありますが)『純粋理性批判』を通読することができました。序文に続く緒言から感性論を経て、分析論まで読んで何となく満足しつつも、弁証論、そして最後の超越論的方法論まで、自宅や外出先や、はたまた仕事をサボって会社近くの図書館で少しずつ読み進めました。

 

翻訳はすっきりとした訳文で読みやすく感じました。哲学の翻訳を読んでいてたまに出くわす「どうしても我慢のできない訳語」にも遭遇することなく、読み終えることができました。

 

【満足度】★★★★☆