小林道夫の『デカルト入門』を読了しました。新書という形態を意識してのことだと思いますが、本書はあとがきを含めても全体で220ページ程度のコンパクトな構成になっています。その分量のなかで、デカルトの生涯、形而上学、自然学、そして人間学・道徳論について語ろうというのですから、どこかに無理が生じてしまうのは当然かもしれません。小林氏自身があとがきで述懐しているように、入門書というかたちの本書では、氏のデカルト研究の本領は発揮しづらかったのではないかと推測されます。
無理なく端的にまとまった解説書だと思いますが、21世紀に哲学を学ぼうという人に対して新しいデカルト像を提示するところまでは(本書においては)行き着けなかったというところなのでしょうか。
【満足度】★★★☆☆