文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ポール・オースター、J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』

ポール・オースターJ・M・クッツェー くぼたのぞみ・山崎暁子訳

『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』 岩波書店

 

ポール・オースターJ・M・クッツェーの間で取り交わされた書簡集である『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡 2008-2011』を読了しました。どちらも好んで読んでいる作家なのですが、こうして日付を伴った手紙を目にすることによって、パレスチナ問題等をはじめとする時事的な状況に対する二人の作家の態度や考えを知ることができ、新たな発見があります。2011年3月11日という日本人にとって忘れがたい日付に何の言及もなかったのをいささか淋しく感じてはしまったのですが。

 

また、そうした時事的なフロー情報に対する反応がある一方で、いわばそれぞれがテーマを出し合うかたちで、本書では「友情」、「スポーツ観戦」、「携帯電話」などについてのお互いの思索が披露されています。それらも興味深く読むことができました。文学賞と縁遠いオースターが(近作の『4321』が2017年のブッカー賞候補にはなりましたが)、クッツェーの『サマータイム』のブッカー賞ノミネートを祝福する短いくだりなど、作家同士のリアルな関係性も垣間見ることができます。

 

【満足度】★★★★☆