文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トーマス・マン『トーニオ・クレーガー 他一篇』

トーマス・マン 平野卿子訳

『トーニオ・クレーガー』 河出文庫

 

トーマス・マン(1875-1955)の『トーニオ・クレーガー 他一篇』を読了しました。本作は高校時代に読んだような記憶があるのですが、あまり確かなところは覚えていません。大学時代にもたしか新潮文庫の翻訳で読み直してみて、今回は河出文庫の新訳で読み返すこととなりました。

 

表題作冒頭のトーニオ少年とハンス少年の散歩の場面を読んで、その繊細さに感じ入った過去の記憶が蘇ってきたのですが、同時に今回の読書では故郷再訪の場面にしんみりとした情感を覚えるのでした。ノーベル文学賞受賞後の第一作として書かれた「マーリオと魔術師」は初読です。このファシズム批判の書を読みながら、ちょうど併読しているアドルノとマンとが、亡命先のアメリカで知り合いになったというエピソードが思い出されました。読書をしていると、しばしばこうしたシンクロニシティが起こります。

 

【満足度】★★★☆☆