德永恂
德永恂の『現代思想の断層―「神なき時代」の模索』を読了しました。閉店してしまう近所の本屋でセール販売されていたのを手に取ったのが、本書購入のきっかけです。岩波書店の本はこういうときに、ちょっと特殊な扱いを受けてしまうのですが…。そうしたきっかけがなければ読むことはなかったのではないかと思います。ウェーバー、フロイト、ベンヤミン、アドルノという四人の思想家を取り上げて、そこに「大きな物語」を見出そうというのが著者の試みです。
分析系の哲学書を読みなれていると、本書の著述が一体何を目指して、どういう道筋を辿って書かれたものなのか、皆目見当がつかないのではないでしょうか。そこまで言ってしまうと言い過ぎなのかもしれませんが、同じ「哲学」の営みでも、両者の間にはそれくらいに大きな隔たりがあるような気がします。私は著者の思いに幾分共感するよころもあるのですが、それでも哲学で論じられる主題の振れ幅というものには、いささかの当惑を感じてもしまいます。
【満足度】★★★☆☆