文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

パスカル『パンセ』

パスカル 塩川徹也訳

『パンセ』 岩波文庫

 

パスカル(1623-1662)の『パンセ』を読了しました。以前に私が『パンセ』を読んだのは中公文庫の訳で、たしかブランシュヴィック版をもとにした翻訳だったと思います。未完の著作というよりは後世の人間が集積した「断片」に過ぎない本書は、その全貌を捉えることに困難が伴う著作です。本書は訳者の師でもあるフランスのパスカル研究者・メナールが編集中の『パンセ』のいわば「露払い」を務めるものだと、訳者自身によって言明されているのですが、いずれにしても書誌の面に深く立ち入るには敷居が高い書物です。

 

結果的にラフュマ版に近い配列となったといわれる本書ですが、私が以前に読んだ『パンセ』とはまったくその装いが異なり、本書が「キリスト教護教論」のために書かれた断片の集積であることが如実に示されているように感じられました。本書は上・中・下の三巻に分かれて刊行されているのですが、下巻には『パンセ』アンソロジーと題して、有名なフレーズや比較的まとまった断章を分かりやすい章立てで配列した編集版が収録されています。何とも不思議な書物だとあらためて思います。

 

【満足度】★★★☆☆