文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

W・V・O・クワイン『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』

W・V・O・クワイン 飯田隆

『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』 勁草書房

 

W・V・O・クワイン(1908-2000)の『論理的観点から 論理と哲学をめぐる九章』を読了しました。本書には、これを読んでいないと「モグリ」の哲学研究者と言われてしまうという「経験主義の二つのドグマ」を含む9編の論文が収録されています。

 

この二つのドグマとは、「分析的」と「総合的」の区別、そして要素還元主義の二つを指しているのですが、ここで論敵とされているのは「経験主義」で、もう少し突っ込んでいうと論理実証主義であり、クワインの師匠的存在であるカルナップです。そして、この二つのドグマの存在を明らかにすることで浮かび上がってくるのがクワインの採る全体主義的立場というわけなのですが、こうした図式的なまとめ方ではクワインの議論の実際の内実は伝わりづらいような気もします。「経験主義の二つのドグマ」の大部分においてなされているのは、「同義性」というものをめぐるクワインの疑念の表明であり、この問題をテクニカルに追及していった先に実りあるものが存在しているようにも思えません。

 

【満足度】★★★☆☆