安部公房(1924-1993)の『砂の女』を読了しました。1962年に発表された本書は、海外でも高く評価された作品です。読むのは高校時代以来のことでしょうか。昆虫採集のために砂丘へと出かけた男が、砂の底で女が一人暮らす家に閉じ込められて、集落を守るための砂かき作業を求められるというストーリーです。
高校時代はどこか幻想的なイメージを抱きながら読んだのですが、あらためて読み返してみると、リアリスティックな記述の方がむしろ目に付きました。男と女のやり取りについても、嫌らしくはないのですが生々しいものを感じさせられます。安部公房は「世界文学」の作家だと思うのですが、同時に日本文学の作家でもあるのだと思わされました。
【満足度】★★★☆☆