文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

青木淳悟『男一代之改革』

青木淳悟

『男一代之改革』 河出書房新社

 

青木淳悟の『男一代之改革』を読了しました。本書の表題作は寛政の改革を為した松平定信を主人公とした歴史小説なのですが、青木氏の書く小説なので一筋縄ではいかない、どこかおかしなところを持っています。松平定信が『源氏物語』に深い関心を寄せていたことは史実らしいのですが、作中の定信が源氏物語に寄せる想いと、作者である青木淳悟歴史小説に対する距離の取り方が相まって、不思議なおかしみのある作品になっています。

 

えい、おまえなどはな、歴史から完全に抹殺されるべき人間(大崎、生没年不詳)なのだ!

 

同じく本書に収録された「鎌倉へのカーブ」は、神奈川県鎌倉市大船の町の様子を(必要以上に)丹念に描写した作品で、著者の真骨頂という感じを受ける作品です。2011年3月11日の出来事を綴ったエッセイも収録されています。

 

【満足度】★★★☆☆