文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アンナ・カヴァン『アサイラム・ピース』

アンナ・カヴァン 山田和子

アサイラム・ピース』 ちくま文庫

 

アンナ・カヴァン(1901-1968)の『アサイラム・ピース』を読了しました。彼女の作品を読むのは『』に引き続いてのことです。本書はやや長めの短編作品である表題作と、文字通りの短編13篇からなる作品集で、実体のない不安を掬い上げる様は見事なもので、どの作品にも引き込まれてしまいます。

 

たとえば本書の二番目に収録された「上の世界へ」を読む私たちに見える景色は、カフカ的な不条理な世界なのでしょうか、あるいはまさに現実そのものを写し取ったものなのでしょうか。出会われるべきときにその作品に出会うことができた読者は幸運なのだろうと思わされるのが、カヴァン作品の大きな特徴のような気がします。

 

【満足度】★★★★☆