文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

W・V・O・クワイン『ことばと対象』

W・V・O・クワイン 大出晁・宮館恵訳

『ことばと対象』 勁草書房

 

W・V・O・クワイン(1908-2000)の『ことばと対象』を読了しました。本書はクワインの主著という位置づけの書物だと思いますが、特に第二章「翻訳と意味」において展開された「翻訳の不確定性テーゼ」がつとに有名です。「ギャヴァガイ」はもう既にひとつの哲学用語だといってもいいかもしれません。

 

本書の大半は言語の意味や指示をめぐる具体的な分析に当てられていて、まさに「言語論的転回」を経た二十世紀の分析哲学の白眉という印象なのですが、形而上学全盛の予兆が見える二十一世紀の哲学の立場からは、本書の広範な言語分析は一体どのように映るのでしょうか。言語の問題を解決することこそが哲学の問題を解決することであるという確信めいた信念は、二十一世紀においてはいささか影の薄いものになっているような気がします。

 

【満足度】★★★☆☆