文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

W・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』

W・ジェイムズ 桝田啓三郎訳

『宗教的経験の諸相』 岩波文庫

 

W・ジェイムズ(1842-1910)の『宗教的経験の諸相』を読了しました。最近のプラグマティズム関連の読書の一環として手に取った本書ですが、ジェイムズ自身の哲学が孕む特殊さを脇に置いたとしても、哲学的著作というにはいささか特異な内容となっています。

 

宗教的経験の心理学的分析を通じて宗教というものの本質の一端を捉えようとする本書の研究は、ジェイムズの出世作(?)である『心理学原理』と同様に心理学の古典でもあります。しかし、哲学という観点から見ると、本書に対する興味関心は、トルストイエマソンホイットマンなどの「宗教的天才」に関する膨大な引用を通じた分析よりもむしろ、それらを通底する哲学的な関心事の方に向かわざるを得ません。本書の結論部分で簡単に素描されるその哲学的な世界観の内実を確かめるには、ジェイムズの「根本的経験論」に関する思想を待たなければならないということなのでしょうか。

 

【満足度】★★★☆☆