文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

パトリック・モディアノ『暗いブティック通り』

パトリック・モディアノ 平岡篤頼

『暗いブティック通り』 白水社

 

パトリック・モディアノ(1945-)の『暗いブティック通り』を読了しました。ゴンクール賞の受賞作品である本書が発表されたのは1978年。日本ではその翌年に邦訳が出版されていますが、韓国ドラマ『冬のソナタ』のシナリオ作家が本書に影響を受けたと語ったことから、2005年になって新装版の訳書が刊行されています。モディアノがノーベル文学賞を受賞するのは、さらにその9年後である2014年のことです。

 

本書において展開されるのは記憶喪失の男が失われた自らの過去を巡るストーリーで、引退した私立探偵を参謀にしながら進んでいくプロットは、まるで現代のミステリー作品を読んでいるかのようです。不確かなヴェールに覆われた過去へと数珠繋ぎの関係者を辿りながら進んでいくさまは、スリリングというよりは内省的な印象で、明示されなかった事柄が歴史を浮かび上がらせるという構図になっています。

 

【満足度】★★★☆☆