文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

コーマック・マッカーシー『平原の町』

コーマック・マッカーシー 黒原敏行訳

『平原の町』 ハヤカワ文庫

 

コーマック・マッカーシー(1933-)の『平原の町』を読了しました。『すべての美しい馬』、『越境』に続く「国境三部作」の完結編とでもいうべき作品です。主人公は第一作『すべての美しい馬』に登場したジョン・グレイディ・コール、そしてその脇を固める友人として第二作『越境』の主人公であるビリー・パーハムです。

 

本書は、ジョン・グレイディが年若いメキシコ人の娼婦を見初めて、運命的な恋愛へと身を投じていくといういわば恋愛劇なのですが、相変わらずのクールな文体で情感をコントロールしながら、必然的に悲劇的である結末へと向かって物語はひたひたと進んでいきます。そして第二作で越境のたびにすべてを失ったビリーは、本書においてもいわば静かな観察者として、その物語の行く末を見届ける役割を果たします。本書は三部作の最後を飾るものとして、打たれなければならないピリオドとして、書かれた物語なのだと感じられました。

 

【満足度】★★★☆☆