文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』

マヌエル・プイグ 野谷文昭

『蜘蛛女のキス』 集英社文庫

 

マヌエル・プイグ(1932-1990)の『蜘蛛女のキス』を読了しました。アルゼンチンの作家プイグは、ガルシア=マルケスよりはやや年下で、バルガス=リョサよりはやや年上という年代にあたり、サブカルチャー等を積極的に作品に取り入れるスタイルでベストセラー作家の仲間入りをするものの、57歳という若さでエイズにより逝去しています。彼の『ブエノスアイレス事件』を読んだのは高校生の頃だったと思いますが、ほとんど記憶には残っていません。本書はかなり久しぶりのマヌエル・プイグ読書体験となります。

 

映画の粗筋について語る「男女」。本編のほとんどは、二人による会話によって構成されています。彼らが置かれたシチュエーション、両者の関係性、陰謀や感情の揺れ動き画など、時折挿入される戯曲ふうのやり取りやレポートによって明らかになってくる絵柄が読者のなかで完成する頃には、物語はクライマックスを迎えることになります。とても面白く読むことができました。

 

【満足度】★★★★☆