文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ロベルト・ボラーニョ『通話』

ロベルト・ボラーニョ 松本健二訳

『通話』 白水社

 

ロベルト・ボラーニョ(1953-2003)の『通話』を読了しましたいわゆる「ブーム」を形作ったラテンアメリカ文学の系譜とは少し世代を画する、若きチリの作家・ボラーニョですが、50歳の若さで亡くなった後は、とりわけその作品の評価が高まっているようです。読んでみたい作品はたくさんあるのですが、初めて手に取ったのは1997年に発表された第一短編集である本書でした。

 

不思議な読後感の残る作品集で、著者の人生の断片・その中で様々に関わりがあった人物を思わせ男女が代わる代わる各編の主人公として登場し、それぞれの趣向や語り口にも変化が見られます。これを試行錯誤の結果と見るのか、ボラーニョという作家の「見本市」のようなものとして本書を捉えるのか、見方は様々なのだと思いますが、短編よりは長編が面白そうな作家というのが私の第一印象でした。

 

【満足度】★★★★☆