『天使エスメラルダ 9つの物語』 新潮社
ドン・デリーロ(1936-)の『天使エスメラルダ 9つの物語』を読了しました。本書には表題のとおりに9つの短編作品が発表年代順に収録されています。古いものでは1979年、最近のもので2011年ということで、そのスパンは30年以上にわたっています。訳者のひとりである都甲氏によって書かれた「あとがき」は大変な熱量がこもったもので、私がうまく捉えることができていなかったデリーロ作品の肝要な部分というものを的確に示してもらえたような気がします。
冒頭に置かれた「天地創造」や表題作でもある「天使エスメラルダ」が特に印象に残ったのですが、デリーロの本領が発揮されているのはやはり表題作であるといってよいのでしょう。1994年に発表されたこの短編のモチーフは、1997年の長編『アンダーワールド』にも反映されているということです。
【満足度】★★★★☆