モーシン・ハミッド 藤井光訳
『西への出口』 新潮社
モーシン・ハミッド(1971-)の『西への出口』を読了しました。パキスタン生まれの作者は、アメリカのロースクールを卒業後、マッキンゼーに勤務しながら小説の執筆を行い200年にデビュー、2007年に発表した『コウモリの見た夢』でブッカー賞の最終候補になっています。本書は2017年に発表された作品で原題は“Exit West”です。
中東と思しき街で出会った個性的な男女は、激化する内戦から逃れるように「扉」をくぐってギリシャ、イギリス、そしてアメリカへと渡ってきます。この「扉」の存在こそが本書を寓話めいた装飾で彩る装置になっているのですが、その他の描写が至ってリアルであるだけに、この「扉」というものも「移住」ということにまつわるアレコレを単純化するための文学的原理のようにも思えてきます。
【満足度】★★★★☆