文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イアン・ハッキング『確率の出現』

イアン・ハッキング 広田すみれ・森元良太訳

『確率の出現』 慶應義塾大学出版会

 

イアン・ハッキング(1936-)の『確率の出現』を読了しました。現代アメリカを代表する科学哲学者のひとりであるハッキングが1975年に発表して、現在まで続く確率論隆盛の嚆矢となった著作です。フーコーを援用して自身の立場を語るハッキングからすれば、本書を科学史の本と表現することにはいささかの反発があるのだと思いますが、本書は紛れもなく確率(Probability)をテーマにした科学史の名著だと思います。

 

確率の二元性を指摘するとともに、その源流を注意深く辿っていく手つきやライプニッツを導き手とした叙述などは、本書の帯にあるように、大げさにいえば「謎解きの興奮が味わえる」ものになっていて、専門書ではありますが広く科学史に関心のある人には興味深い著作になっているのではないかと思います。

 

【満足度】★★★★☆