ヒラリー・パトナム 野本和幸他訳
ヒラリー・パトナム(1926-2016)の『理性・真理・歴史 内在的実在論の展開』を読了しました。パトナムは20世紀後半のアメリカにおいて大きな影響力を持った哲学者のひとりで、「水槽の中の脳」、「双子地球」といった思考のガジェットは、分析哲学を学んだ人にとってはお馴染みのものになっています。パトナムは本書において、それらの概念・思考実験を駆使しながら、指示の問題、認識論、心身問題、合理性や事実と価値を巡る考察など、哲学上の主要なトピックスに切り込んでいきます。
科学的実在論から(本書の副題にもなっている)内在的実在論と本人が呼ぶ立場、そして更に後年には「洗練された素朴実在論」や「自然的実在論」という陰影に富んだ立場を取るようになるパトナムですが、彼が影響を受けた哲学者としてカント、ウィトゲンシュタイン、そしてデューイの名前を挙げると、その思想的な結実がどのようなものなのか、何となくですがイメージができてくるような気もします。
【満足度】★★★☆☆