文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

筒井康隆『残像に口紅を』

筒井康隆

残像に口紅を』 中公文庫

 

筒井康隆の『残像に口紅を』を読了しました。ネタバレを気にするという作品でもないので、本書の核となる仕掛けにも触れようと思うのですが、本書は日本語の五十音が順番に消えていくなかで書かれた小説であり、そしてそうした消滅して行く世界を描いた小説でもあります。作家を主人公に据えてメタ的にこうした仕掛けに言及するなど、この「小説」を成立させるための細かな工夫もなされています。

 

どの言葉から消していくかという選択も執筆においては重要だったはずで、そんなことを想像しながら読んでも面白いのかもしれません。筒井さんらしい企みに満ちた実験的小説です。

 

【満足度】★★★☆☆