文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トマス・ピンチョン『ヴァインランド』

トマス・ピンチョン 佐藤良明訳

『ヴァインランド』 新潮社

 

トマス・ピンチョン(1937-)の『ヴァインランド』を読了しました。大作『重力の虹』から16年(17年?)の後、1990年に発表された本書は、1960年代に青春時代を過ごしたヒッピーたちの若き日の回想物語であり、1980年代の「現代」へと接続するポップカルチャーの渦潮が描かれるポストモダン小説です。

 

本書におけるゾイド・ホイーラーのようなどうしようもない主人公を描いて妙にホロリとさせるところは相変わらずのピンチョン節なのですが、ゾイドの娘であるプレーリーやゾイドの元妻であるフレネシ、そしてフレネシの友人である「DL」などを中心にして物語りはめくるめく展開を見せていきます。このあたりの渦というか、奔流というか、そういう流れを楽しむことができないとピンチョン作品の読書はかなり辛いのですが、ありがたいことに本書は楽しく読むことができました。

 

【満足度】★★★★☆