乗代雄介
『最高の任務』 講談社
乗代雄介の『最高の任務』を読了しました。芥川賞候補作となった表題作のほか、「生き方の問題」という中編作品が収録されています。「生き方の問題」は、従姉弟同士の性愛という生々しいテーマを取り扱いながら、物語の核となる出来事から約1年後に書かれた書簡という形式を採用することで、対象との距離感をうまくコントロールしています。最後には現実へと接続するかたちでエンディングを迎えるエクリチュールは、その時間的な構造によって、作品に奥行きをもたらしています。
表題先「最高の任務」はとてもよくできた作品で、その出来の良さゆえに少し損をしてしまっているような気もします。
【満足度】★★★★☆