文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

コルタサル『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』

コルタサル 寺尾隆吉訳

『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』 光文社古典新訳文庫

 

フリオ・コルタサル(1914-1984)の『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』を読了しました。1951年に発表されたコルタサルの活動初期の短編集です。本書には8編の短編作品が収録されていますが、表題作の一つにもなっている「奪われた家」は、岩波文庫に収録された日本独自編集の短編集に「占拠された屋敷」として収められています。

 

「バス」という短編が心に残りました。同じくバスの中で直面する不条理な「暴力」が描かれている大江健三郎の「人間の羊」(1958年)が思い出されました。解説で言及されているように、この作品が時代の空気に反抗するものだったとすれば、それほど遠くない時代において地球の裏側で書かれた作品同士の違いを比べてみるのも面白いのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆