文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

カズオ・イシグロ『夜想曲集』

カズオ・イシグロ 土屋政雄

夜想曲集』 ハヤカワ文庫

 

カズオ・イシグロの『夜想曲集』を読了しました。現在のところ、刊行されている唯一の短編集ということになるのでしょうか。「音楽と夕暮れを巡る五つの物語」という副題が示すとおり、音楽を重要なモチーフとした五編の作品が収録されています。訳者あとがきによれば、書き溜めていた作品をまとめたものではなく、書き下ろしとして著されたものであるとのこと。

 

冒頭を飾る「老歌手」は短いながら奥行きのある作品で、かつて旅行したヴェネチアの町並みを思い出しながら、しんとした気持ちで読むことができました。「降っても晴れても」に見られるユーモア作家としての手筋は爽快で、こちらも楽しく読むことができました。総じて満足度の高い読書体験でした。

 

【満足度】★★★★☆