文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

アーダベルト・シュティフター『書き込みのある樅の木』

アーダベルト・シュティフター 磯崎康太郎編訳

『書き込みのある樅の木』 松籟社

 

アーダベルト・シュティフター(1805-1868)の『書き込みのある樅の木』を読了しました。松籟社から出版されている「シュティフター・コレクション」の4巻目です。本書には標題作のほか「高い森」、「最後の一ペニヒ」、「クリスマス」の4篇が収録されています。シュティフターの生誕地であるオーバープラーンをはじめとするボヘミア地区の自然が生き生きと描かれます。オーバープラーンは当時はオーストリア領で、現在はチェコに属するホルニー・プラナーという名前の人口約2,000人の町になっています。Googleストリートビューで風光明媚な静かな町並みを見ることができます。

 

シュティフター作品は自然描写を読んでいるうちにストーリーが頭に入ってこなくなるというのが(私の中での)定番の読書体験で、作品で描かれる登場人物の生き様や歴史の方がむしろ背景にあって、そこに横たわる自然の方が前景で主役めいた存在感を発揮し始めるのでした。

 

【満足度】★★★☆☆