文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ル・クレジオ『海を見たことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語』

ル・クレジオ 豊崎光一・佐藤領時訳

『海を見たことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語』 集英社文庫

 

ル・クレジオ(1940-)の『海を見たことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語』を読了しました。1978年に発表された本書には、8編の短編が収録されています。邦訳では副題のようになっている「モンドほか子供たちの物語」がフランス語の原題なのですが(「海を見たことがなかった少年」は別の収録作品のタイトル)、その名が示すとおり、本書の作品群の中心に据えられているのは子どもたちです。

 

詩情性のある文体は相変わらずというところで、簡易な表現の中にもハッとさせられる部分があって、そこはさすがという感想です。ル・クレジオ作品の登場人物には、どこか常に世界との距離感を測っているようなところがあると感じられるのですが、子どもたちを主役に据えた本書のような作品でこそ、その真骨頂が発揮されるという言い方もできるのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆