文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

パール・バック『大地』

パール・バック 新居格訳・中野好夫補訳

『大地』 新潮文庫

 

パール・バック(1892-1973)の『大地』を読了しました。アメリカに生まれながら宣教師である両親のもとで幼少期を中国で過ごした彼女が、中国の大地に生きた王家三代のクロニクルを描いた作品です。ピュリッツァー賞の受賞作であると同時に、1938年のノーベル文学賞受賞においても大きな役割を果たした作品であるとされています。

 

本書は第一部「大地」、第二部「息子たち」、第三部「分裂する家」から構成されていますが、もともとは個別の作品として発表されたもののようです。家系の年代記を描いた作品としては、本書の30年前に発表されたトーマス・マンの『ブッデンブローク家の人びと』などが思い出されますが、親子のすれ違いや不思議な先祖がえりなど、このジャンルならではの読みどころというか味わいがあります。本作品で描かれた三代記における一代目の母である阿蘭の姿は、あまりにもストイックな忍従の実践によって強烈な印象を残します。

 

【満足度】★★★☆☆