アリス・マンロー 小竹由美子訳
『ディア・ライフ』 新潮社
アリス・マンロー(1931-)の『ディア・ライフ』を読了しました。2012年に発表された本書は「最新最後の短編集」と銘打たれています。2013年6月に執筆生活からの引退を明言したアリス・マンローは、同年にノーベル文学賞を受賞した後も現在に至るまで小説を発表していません。
本書の末尾に収録された四つの短編の前には「フィナーレ」という短い枕詞が付せられており、「完全な創作ではない」とされる母親をめぐる自伝的な作品が読者の前に提示されます。マンローが「自分自身の人生についてわたしが語るべき最初で最後の」ものだとするこれらの小説は、マンローが書き綴ってきたその他の作品と同様に、私たち誰かの「もっとも事実に近い」ことを描いたものであり、それゆえに深い余韻を残します。
【満足度】★★★☆☆