文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ドストエフスキー『未成年』

ドストエフスキー 工藤精一郎訳

『未成年』 新潮文庫

 

ドストエフスキー(1821-1881)の『未成年』を読了しました。ドストエフスキーの絶筆は『カラマーゾフの兄弟』ですが、最後から二番目に書かれた長編作品が本書『未成年』で、これまでずっと読む機会がなかったのですが、このたびようやく手に取ることができました。ロシア社会の大きな揺れ動きを背景に、「未成年」であるアルカージイとその血統上の父親である貴族ヴェルシーロフを軸にして、長大ではありますがまとまりのない物語が展開されていきます。

 

混沌と表現するのがぴったりとくるようなプロットや、様々な方向に散逸していく思考の矢、激情と冷静の奇妙なバランス感など、本書の「未成年」というタイトルには相応しく面白く読むこともできたのですが、全体を通読するにはいささか苦労しました。一般向けというよりはいわゆる玄人向けの作品と言えるのかもしれません。

 

【満足度】★★★☆☆