文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

モリエール『タルチュフ』

モリエール 鈴木力衛

『タルチュフ』 岩波文庫

 

モリエール(1622-1673)の『タルチュフ』を読了しました。コルネイユラシーヌと共に17世紀フランスを代表する劇作家のひとりであるモリエールですが、悲劇よりは喜劇の分野で名を成した作品が多く、本書も喜劇として知られています。とはいえ、筋書きとしては深刻な場面も多く、あまり笑えるシーンというものはありません。第三幕まで登場しない「偽善者」タルチュフの謎めいた存在感は、むしろ悲劇的な結末すら予感させるようです。

 

カトリックの秘密結社「聖体秘蹟協会」を巡る本作品の上演禁止のエピソードや、若き国王ルイ14世、母后アンヌ・ドートリッシュや宰相マザランらの政治的な場外乱闘の方にもドラマがあって、本書と同じ訳者の手による『ダルタニャン物語』をゆっくりと読み進めている身としては、作品本体よりもそちらの方に興味が移ってしまうのでしたが。

 

【満足度】★★★☆☆