文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

トム・ジョーンズ『拳闘士の休息』

トム・ジョーンズ 岸本佐知子

『拳闘士の休息』 河出文庫

 

トム・ジョーンズ(1945-2016)の『拳闘士の休息』を読了しました。本書の表題作はトム・ジョーンズのデビュー作で『ニューヨーカー』への持ち込み原稿が編集者の目に留まり発表されると、1993年のオー・ヘンリー賞を受賞し、また同作をタイトルとする短編集は全米図書賞の候補作ともなりました。遅咲きの作家だったといえますが、2016年に逝去するまで長編作品を発表することはありませんでした。

 

特に海外文学を読んでいて強く感じることではあるのですが、優れた小説というものは歴史を貫き通す力を持っていて、本書の表題作においてもボクシング(というよりは「拳闘」を一つのモチーフとして)ベトナム戦争古代ギリシアの時代が力強く接続され、勇敢さとは何かという普遍的な問いを模索する物語の方途に、しっかりとした説得力が与えられているように思います。

 

【満足度】★★★★☆