文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

ジョン・アーヴィング『また会う日まで』

ジョン・アーヴィング 小川高義

『また会う日まで』 新潮社

 

ジョン・アーヴィング(1942-)の『また会う日まで』を読了しました。2005年に発表されたアーヴィングの11作目の長編小説で、原題は“Until I Find You”です。父を知らずに育った主人公のジャック・バーンズは、姿を消してしまったオルガン弾きである父を追って、刺青師として生計を立てる母と共に北欧の街を転々としながら幼少時代を過ごします。様々な年上女性からの「寵愛」を受けながら成長したジャックは、やがて俳優としてハリウッドで成功しますが、親しい女性や母の死をきっかけとして、再び父親を探す旅に出ることになります。それは彼自身の記憶の正誤を確かめる旅にもなるのですが。

 

アーヴィングが敬愛する作家とえばチャールズ・ディケンズですが、年上の女性からの性的虐待や離婚した父を追い求める姿など作者自身の体験(といわれるもの)が如実にプロットに反映されている本書は、さしずめアーヴィングにとっての『デイヴィッド・コパフィールド』であると言えるのかもしれません。長い長い物語の末にたどり着くエンディングの味わいも、同作を思わせるものになっているような気がしました。

 

【満足度】★★★☆☆