『アメリカン・サイコ』 角川文庫
ブレット・イーストン・エリス(1964-)の『アメリカン・サイコ』を読了しました。かつて映画化もされて良くも悪くも話題になった作品ですが、それから20年以上経ってからの読書となりました。ブレット・イーストン・エリスの作品はデビュー作である『レス・ザン・ゼロ』を学生時代に読んで暗澹たる気分になって以来なのですが、その処女作に劣らず問題作である本書についてはどうでしょうか。
繰り返される暴力的で凄惨な描写、はやりのレストランや流行を追い求めるだけの無為な会話、時折挿入される異常に力のこもったサブカルチャーに対するレビューなど、意図的に作り出された空虚さが80年代のアメリカを象徴的に描き出しています。主人公グループのヒーローとして言及されるのがドナルド・トランプという点が何とも皮肉なところで、刊行から30年を経た現代において本書がまだ読まれるべき存在であることが図らずも示されたと言えるのかもしれません。
【満足度】★★★☆☆