文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ くぼたのぞみ訳

アメリカーナ』 河出文庫

 

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ(1977-)の『アメリカーナ』を読了しました。アディーチェはナイジェリアの作家で、2013年に発表された長編第三作である本書は全米批評家協会賞を受賞しています。気になっていた作家のひとりなのですが、ようやく彼女の本を手に取ることができました。

 

ナイジェリア出身で現在はアメリカのプリンストンでフェローとしての生活を送っているい女性・イフェメルが、アフリカン・ヘアサロンの店員に対して故郷であるナイジェリアへの帰国について語る場面から物語は始まります。このあたりの場面設定も絶妙だなと思わされるのですが、イフェメルは人種問題をテーマにしたブログの執筆で有名になっていて、日常生活においても、そしてそれをブログというかたちで言語化するというレベルにおいても、アフリカ人としての自己同一性を絶えず相対化しながら暮らしています。そんなイフェメルの視点を中心にしながら、彼女のかつての恋人で今はナイジェリアに暮らすオビンゼも含めた過去の挿話が時空を入れ替えながら展開され、本書は全体としてとてもリーダブルな物語として楽しむことができるものになっています。

 

本書の物語の行く末については、読む時期やタイミングが違えば、また今回の読書とは違った印象を持ったのではないかとも思うのですが、いずれにしても楽しく読むことはできました。

 

【満足度】★★★☆☆