文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

チャールズ・テイラー『今日の宗教の諸相』

チャールズ・テイラー 伊藤邦武・佐々木崇・三宅岳史訳

『今日の宗教の諸相』 岩波書店

 

チャールズ・テイラー(1931-)の『今日の宗教の諸相』を読了しました。カナダの政治哲学者で非常に幅広い分野での論考で知られるチャールズ・テイラーは、現代においては稀有な存在でもある「知識人」と呼ぶに相応しい哲学者のひとりと言えるかもしれません。そのテイラーが、約100年前に発表されたウィリアム・ジェイムズの『宗教的経験の諸相』を再訪するかたちで、現代の宗教の本質を解いてみせたのが本書です。

 

テイラーはジェイムズによる宗教的経験の分析を、現代社会における世俗化による信仰の変容をまさに先取したものであると高く評価しますが、一方でその宗教的体験がいかなる共同体性とも切り離されたものとして捉えられているとすれば、それは物事を単純化しすぎていると警鐘を鳴らしています。テイラーのいう世俗化の複雑なプロセスを正しく把握するためにも、テイラーの『世俗の時代』を読んでみたくなりました。

 

【満足度】★★★★☆