文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

イアン・マキューアン『恋するアダム』

イアン・マキューアン 村松潔訳

『恋するアダム』 新潮社

 

イアン・マキューアン(1948-)の『恋するアダム』を読了しました。原題は“Machines Like Me”で、相変わらず意訳したタイトルをつけるのはマキューアン作品翻訳の定番なのでしょうか。マキューアン自身が意訳せざるを得ないタイトルを付けがちであるということなのかもしれませんが。

 

冴えない男、秘密を抱えた女、そしてアンドロイドの「アダム」の奇妙な三角関係を軸に物語が進んでいくのですが、マキューアンお得意のサスペンス要素を絡めながら、どこか不穏な空気が作品全体の奥底に沈殿しています。数学者チューリングが生きているパラレルワールド(テクノロジーの進歩も現実世界よりも早いようです)を舞台にしているのですが、その設定の使い方もなかなか斬新に感じました。作品としての「不協和なまとまり」とでも言うべきものは、さすがマキューアンといったところでしょうか。

 

【満足度】★★★☆☆