フォークナー 諏訪部浩一訳
フォークナー(1897-1962)の『八月の光』を読了しました。1932年に発表された作品でヨクナパトーファ・サーガの一作とされますが、原題である“Light in August”は当初は“Dark House”であったといわれます。闇から光という真逆のタイトルに転換された経緯には興味を惹かれます。
本書においては三人の登場人物を軸として物語が展開されます。ひとりは自分を妊娠させて姿をくらませた男を追って旅をするリーナ・グローヴ、自身の血に潜む疑問により人種的アイデンティティを揺るがされるジョー・クリスマス、そして世捨て人のように暮らす牧師ゲイル・ハイタワーの三名です。やがて交わることになる三人それぞれの孤独が描かれますが、なかでもやはりクリスマスの悲劇が特に心に残ります。巷間言われていることではありますが、フォークナー作品の中では比較的読みやすい構成となっていて、フォークナーの入門編として最適なのではないかと思います。
【満足度】★★★★☆