J・S・ミル 関口正司訳
『自由論』 岩波文庫
J・S・ミル(1806-1873)の『自由論』を読了しました。経験主義に立脚する哲学者であり論理学や科学哲学の嚆矢となる業績を残し、倫理学の分野ではベンサムの功利主義を発展させ、さらには経済学に関する論考も残した才人のミルですが、政治哲学の分野でとりわけ重要な著作として知られているのが本書『自由論』(原題は“On Liberty”)です。
文明社会のどの成員に対してであれば、本人の意向に反して権力を行使しても正当でありうるのは、他の人々への危害を防止するという目的の場合だけである。
ミルが明確に提唱した、この「他者危害禁止の原理」、あるいは本書の解説での表現を用いれば「自由原理」は、倫理学においても基本となる概念のひとつだと思いますが、本書の解説でも指摘されているように、この原理を根底に置きながら、さらにどのような陰影の元で社会統治が営まれているのかを追求していくことこそが、ミルの主眼としていたことなのでしょう。
【満足度】★★★★☆