『M/Tと森のフシギの物語』 講談社文庫
大江健三郎の『M/Tと森のフシギの物語』を読了しました。1986年に刊行された本書は、1979年に発表された『同時代ゲーム』を平易な言葉で語り直した作品であるとされていますが、作者が生まれ育った四国の森を舞台にした神話的物語を辿るというプロット自体は変わっていません。“Matriarch”と“Trickster”というワードにて表象される神話的登場人物が織り成す村の歴史は、たしかに『同時代ゲーム』のそれよりもはるかに読みやすい語りになっています。
海外で最もよく読まれている大江作品は本書らしいのですが、明確なビジョンと方法論を感じさせる作品で、さもありなんという感じがします。
【満足度】★★★★☆