文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』

スチュアート・ダイベック 柴田元幸

『シカゴ育ち』 白水Uブックス

 

スチュアート・ダイベック(1942-)の『シカゴ育ち』を読了しました。文学研究者で翻訳家でもある柴田氏が「これまで訳した中で最高の一冊」と述べている作品(それがいつの時点のことなのかは分からないのですが)です。14編の作品が収録された短編集ですが、同じ「短編」とはいってもその長さは様々で、翻訳にして5ページ以内で幕切れとなる短い作品もあれば、いわゆる短編小説らしい長さのものもあります。

 

印象に残ったのは冒頭の「ファーウェル」という作品で、とても短い一篇なのですが、雪の情景を含めて景色がパッと頭の中に浮かんでくる抒情的な作品です。登場人物であるロシア文学のゼミ講師が語る「でもね、ひとつの場所にとどまっていると、いずれ遅かれ早かれ、自分が属す場所がもうなくなってしまったことを思い出してしまうんだよ」という台詞がとてもリアルに感じられるのでした。

 

【満足度】★★★