文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』

チャック・パラニューク 池田真紀子訳

ファイト・クラブ』 ハヤカワ文庫

 

チャック・パラニューク(1962-)の『ファイト・クラブ』を読了しました。デヴィッド・フィンチャー監督のもとブラッド・ピットが主演して大ヒットした映画については、私は未視聴だったのですが、そのおかげもあってネタバレを受けることなく原作である本書を楽しむことができました。とはいえ「何か仕掛けがある」というレベルの情報を受け取ってしまっただけで、本書のいわゆるオチの部分には見当がついてしまっていて、それもどうなのだろうと感じさせられてしまうのですが。

 

ブレット・イーストン・エリスはパラニュークを評して「ぼくたちの世代のドン・デリーロ」と評しているとのことですが、ひとつの陥穽から宇宙的に広がっていく破滅のイメージはデリーロの作風と本書から受ける印象に共通するものがあるのかもしれません。本書の解説でアメリカ文学者の都甲氏が哲学者の戸田山氏の言葉を引いて「啓蒙」と呼んだ作中のエピソードも忘れがたいものでした。

 

【満足度】★★★