文学・会議

海外文学を中心に、読書の備忘録です。

タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』

タナハシ・コーツ 池田年穂訳

『世界と僕のあいだに』 慶應義塾大学出版会

 

タナハシ・コーツの『世界と僕のあいだに』を読了しました。最近では小説作品も邦訳されましたが、ジャーナリストであり2016年の『タイム』誌が発表する「世界で最も影響力のある100人」にも選出されたタナハシ・コーツの全米図書賞受賞作(2015年)が本書です。本書においてコーツが掲げるテーゼは、現在に至るまでのアメリカの歴史は「黒人の肉体は自らの所有物ではない」ことを示しているというもので、極めて強烈な印象を読者に残します。「黒人の肉体は(アメリカという国の発展において)比類のない価値を持つ天然資源である」という主張は、さらにインパクトがあります。

 

本書を読むと、世界と自分、そして自分の世界と他人の世界との間にあるギャップを埋めるための努力は途方もないもののように感じられてしまうのですが、同時にそこへと至るための力強い動力も本書の語りの中に見出すことができます。

 

【満足度】★★★