グラス『ブリキの太鼓』
グラス 池内紀訳
ギュンター・グラス(1927-2015)の『ブリキの太鼓』を読了しました。1959年に発表されたグラスの第一作目の小説であり、彼の代表作でもある作品です。学生時代に集英社文庫の高本研一氏の翻訳で読んだことがあったのですが、このたびは河出書房新社の文学全集にて再読することになりました。
主人公であるオスカルの祖父にあたる人物が官憲に追われるなかで、オスカルの祖母となる女性の玉ねぎのように膨らんだ大きなスカートの中に隠れて追手をやり過ごし、そしてその時にオスカルの母がこの世に宿るきっかけを成したという奇妙なエピソードから始まる本書は、性的でユーモラスでありながら、どうしようもなく不吉な挿話の集積です。自らの意思で成長することを止め、ブリキの太鼓を抱えながら、その声によってガラスを割ることができるというオスカルの半生(30歳まで)が第二次世界大戦下のドイツを舞台に描かれる本書の物語を一体どのように受け止めればよいのか、学生時代に読んだときの私にも、そして今の私にとってもよく分からないままであるというのが正直な感想です。
【満足度】★★★☆☆